行橋市議会より、『建築物石綿含有建材事前調査・除去費用の国民への周知と国民負担軽減措置を求める国への意見書』がでています。アスベスト(石綿)関連の補助金は、まだまだ不十分で、分析調査費用まで含めると「住宅・建築物安全ストック形成事業」の25万円の補助金では、厳しいと考えています。
別紙意見書(案)
意見書第8号
建築物石綿含有建材事前調査・除去費用の国民への周知と国民負担軽減措置を求める国への意見(案)
地方自治法第99条の規定による別紙意見書(案)を会議規則第13条により提出します。
令和4年12月23日
提出者 德 永 克 子
提出者 田 中 次 子
賛成者 二 保 茂 則
賛成者 大 池 啓 勝
賛成者 藤 木 巧 一
行橋市議会議長 小 原 義 和 様
提出先 内閣総理大臣、法務大臣、内閣官房長官、衆議院議長、参議院議長財務大臣、厚生労働大臣、国土交通大臣、環境大臣
建築物石綿含有建材事前調査・除去費用の国民への周知と国民負担軽減措置を求める国への意見(案)
アスベスト健康被害が多発した事は、アスベスト建材の大量使用や吹付けアスベストの多用が、建築基準法により定められていたことが大きな理由です。
欧州先進国に遅れてアスベスト使用を規制したことは国の規制権限の不行使であると、泉南アスベスト訴訟の最高裁判決、建設アスベスト訴訟の最高裁判決でも明らかにされています。
現在問題視されているのは、2006 年 9 月 1 日(アスベスト全面禁止)以前に建てられた既存の民間住宅の解体・改修工事です。国の補助制度として、社会資本整備総合交付金の「住宅・建築物安全ストック形成事業」がありますが、
①対象建材が吹付け材(レベル 1)などに限定、
②補助金額が費用の一部(調査上限 25 万円/棟、除去:自治体実施は 3 分の 1 以内、民間業者は自治体の補助額の 2 分の 1・かつ全体の 3 分の 1 以内)に過ぎず、極めて不十分です。石綿建材の多くが成形板(レベル 3)であり、戸建てや小規模ビル等では使えない制度となっています。
アスベスト関連法(大気汚染防止法・石綿障害予防規則)が改正され、アスベスト含有建材の調査報告がレベル 3 までとなりました。国は規制の強化を打ち出していますが、調査・除去費用は建物所有者(国民)が負担することになります。
解体・改修費用が増加することになり、負担は相当な額になります。その負担を避けようと、無届け、違法工事が横行してしまえば、国民や建設工事従事者の健康被害は計り知れません。
多くの国民がアスベストの健康被害、アスベスト関連法改正、そして調査・除去費用の施主負担を知りません。
よって、国会及び政府においては、国民全体の課題と捉え、国民への周知を行い、国(国交省)の「住宅・建築物安全ストック形成事業」にある「住宅・建築物アスベスト改修事業」の大幅な拡充、一般住民が使えるレベル3までの調査・除去費用の助成制度を求めます。
記
1、国は、国民に対し、アスベストの健康被害、アスベスト関連法改正を周知徹底すること。
2、国(国交省)の「住宅・建築物安全ストック形成事業」にある「住宅・建築物アスベスト改修事業」について、一般住民が使えるレベル3までの調査・除去費用の助成(補助)制度に拡充すること。
以上、地方自治法第99条の規定により意見書を提出する。
令和4年12月23日
行 橋 市 議 会
行橋市は、福岡県の市町村の一つであり、近年、建築物に含まれるアスベスト(石綿)に関する事前調査や除去に関する対応に取り組んでいます。特に「建築物石綿含有建材事前調査・除去費用」に関する意見書を国に提出した背景には、アスベストによる健康リスクを防ぐために必要な財政的支援や法整備に対する要望があります。この問題は、全国の多くの自治体や建物所有者が直面している課題であり、行橋市も例外ではありません。
アスベスト問題の背景
アスベストは、かつて建築物の断熱材や防火材として広く使用されていましたが、繊維が空気中に飛散し、人間が吸い込むことで、深刻な健康被害をもたらすことが分かっています。そのため、アスベストを含む建材の使用は日本でも禁止され、既存の建物に使用されているアスベストは、適切な調査・除去が必要となっています。
特に、解体や改修工事が行われる際には、アスベストの有無を事前に調査し、もしアスベストが含まれていれば、専門業者による適切な除去作業が求められます。この作業には、高い費用がかかるため、財政的な支援が不可欠です。
行橋市が国に意見書を提出した理由
行橋市が国に対して意見書を提出した背景には、建築物石綿含有建材の事前調査や除去にかかる費用負担が地方自治体や民間事業者に重くのしかかっている現状があります。特に以下の点が大きな課題となっています。
- 財政的負担の増大: アスベストを含む建物が多く残されており、その除去や管理には多額の費用がかかります。地方自治体や建物所有者は、その費用を負担しきれない場合が多く、国の財政的な支援を求めています。
- 安全性確保の緊急性: アスベストが飛散すると、周辺住民や作業員に対する健康リスクが非常に高いため、早急な対応が求められています。しかし、予算の不足や適切な人材・業者の確保が難しいため、自治体単独では十分な対応が難しい現状があります。
意見書の主な内容
行橋市が提出した意見書は、以下のような内容が含まれていると考えられます。
- 国からの財政支援の強化: 建物所有者や地方自治体が負担するアスベスト除去や事前調査の費用に対して、国からの補助金や助成金の充実を求めています。特に公共施設や住宅に使用されているアスベストの除去には大規模な費用が必要であり、国の支援が不可欠です。
- アスベスト除去に関する法整備の推進: アスベストの除去作業に関しては、専門業者による厳密な手順が求められていますが、それらの規制やガイドラインの整備を国に対して求めています。また、法制度が現場の実情に合致していない部分があるため、それらの改善も提案していると考えられます。
- 地方自治体の負担軽減: アスベストの事前調査や除去作業は、地方自治体の財政に大きな負担をかけるため、自治体に対する国の支援を強化し、地方公共団体が独自に対応できるような制度的な枠組みを提案しています。
意見書提出の目的
行橋市が国に意見書を提出する目的は、最終的には市民の安全と健康を守ることにあります。アスベストは目に見えない形で飛散し、時間が経過してから健康被害が顕在化するケースが多いため、迅速かつ適切な対応が不可欠です。そのため、地方自治体が国の支援を受けつつ、効果的にアスベストの問題に対応できるようにするための仕組みづくりを目指しています。
全国的な影響
行橋市だけでなく、全国の多くの自治体でも同様の課題が存在しています。アスベスト問題は日本全体に広がっており、特に古い公共施設や学校、住宅などにおけるアスベスト対応が大きな課題となっています。行橋市のような自治体が声を上げ、国に対して具体的な提案を行うことで、全国的なアスベスト対策の改善が期待されています。
行橋市が提出した「建築物石綿含有建材事前調査・除去費用」に関する意見書は、アスベスト問題に対する地方自治体の切実な要望を反映したものです。地方自治体や建物所有者が適切にアスベスト対策を行うためには、国からの支援や法整備が不可欠であり、行橋市の意見書はその一歩となる重要な提言です。